第一章 ガスポン
俺は子供の頃、勉強も出来ないし、スポーツも程々、まぁよくいる「わんぱく」ってやつで、友達からは何故か「ガスポン」と呼ばれていた。
俺は放課後になると友達とサッカーしたり、野球したり、ごく普通の小学生。
ある日、俺達6年2組の男子で放課後にサッカーをしてると、隣のクラスの1組の奴らが
「俺達と試合しよう!」
と言ってきた。
俺達2組の男子は相談の上、1組の奴らの申し出を受け入れる。
二度とそんな事言えない様にコテンパンにしてやる計画だった。
第二章 オンナ野郎
俺達6年2組は、いつも1組と張り合っていた。運動会も、合唱コンクールもいつも3組じゃなく、1組に負かされる。それは担任の洗脳の賜物か、或いは1組の連中は野蛮な奴らが多いからか、どちらにせよ俺達はいつも1組を意識していた。そんな中での1組とのサッカー。
俺達にとっては大事な勝負だった。
━━━━そして、キックオフ。
試合は始まったが、放課後の試合なんてルールもあってないような、子供同士が「今のは反則だ!」とか「今のはセーフだ!」とかジャッジしながら進められる極めて適当なものだった。
試合は接戦ではあったが、俺達が1点リード、1組の奴らに負けまいと必死だったのだ。しかし、この時2組の選手がハンドしたとか、してないとかで試合中、口論になっている。
俺はGKをしていたから少し遠くからで、よく分かんないが、なかなか決着がつかない。
そんな時に、1組のGKの奴がドカドカとその口論に入っていき、何やらイチャモンをつけている様だ。
俺はわざわざ行く程でもなかったが、その1組のGKは前から気に入らないのも手伝って、俺はその口論している場に行こうとした時、どうやら決着もついたようで、皆がバラバラとその場から離れていた、その時
1組のGKの奴が
「終わったから、来なくていい」
と、手を上げて俺に一言。
なんだコイツ偉そうに…。
しかも男のくせに女みたいに髪を伸ばしてやがる。俺は1組も、もちろんそうだが、このオンナ野郎が特に気に入らなかった。
それからというもの、俺とオンナ野郎は顔を合わせる度に、口論や殴り合いにならないまでも、胸ぐらを掴み合う。そんな関係になった。
そして、俺はいつも思う。
「こいついつかフルボッコにしてやる。」
第三章 中学生活
俺は中学生に入り、好きだったサッカーをしたくて、サッカー部に入部。
もちろん、大嫌いなオンナ野郎も入部してきた。俺はGKに志願。オンナ野郎もGKを志願したが、あいつはチビだから顧問の先生にGKは辞めとけと言われ、フィールダーに転向。
「ざまぁみやがれ」だった。
俺達は練習の時、だいたい別メニュー、同じメニューでも、役割がハッキリと別れる。
オンナ野郎がパス練習の時は、俺はキャッチの練習だし、オンナ野郎がシュート練習なら、それを俺達GK組がセーブする。まぁ、そんな感じ。
ただ、ランニングやダッシュといった走る系の練習は同じだった。
俺達サッカー部員の中でも1番嫌われていた練習。「5分間走」「3分間走」「1分間走」
内容は見たまま
まず「5分間走る」→1分休憩→「3分間走る」→1分休憩→「1分間走る」という単純なものだが、顧問から見て手を抜いていると判断されると、何度も走らされるという。ほんとに恐ろしい練習だった。
普段は下手くそなのに(俺もだが)
そんな練習の時だけ、目立つ奴が居た。
……オンナ野郎である。
オンナ野郎はバカなのか、ペース配分出来ないのか、ピーっと笛が鳴ったら、短距離走みたいなスピードで先輩達も追い越して、いつも先頭を走ってる…最初だけ。
そんなペースで走り出したら後にスタミナが切れて、どんどん皆に抜かされていくという醜態をさらすオンナ野郎。
でも、次の「3分間走」になると、また1番を走って…また抜かれる。その後の「1分間走」も同じ。バカなのか、恥を知らないのか、奴はいつもそんな事を繰り返していたが、そんなバカさ加減を顧問や先輩達は可愛がっていた。
「くだらねぇ…心底くだらねぇ…。」
俺はこういうハッタリ野郎が大嫌いだった。
そして、俺のオンナ野郎に対しての憎悪の念は日を追う事に募っていく。
第四章 同じ
サッカーボールを追いかけた3年間も総体での敗退により。俺達3年生は退部。でもまだまだ燃え尽きてなかった俺は、3年生のみの部活として立ち上げられた「応援団」というものに入る。
主な活動内容は「運動会」や「文化祭」等で応援団演技という名目で全校生徒の前で「フレーフレー」とやる訳だが…これはモテる。
過去の先輩達のそれを見て、クラスの女共は「〇〇せんぱ〜い♡」等と甘ったるい声を漏らしていた。
しかし、それも次は俺の番。
俺は目の前に落ちてる「モテ期」を見逃すことなく、すぐさま入団。
しかし入団してからが大事で、応援団は全員で20名。
その中で、団長1名、太鼓1名、団旗2名。という内訳。この4名の中に入るか入らないかで、己の「モテ期」の盛り上がり具合は随分変わる。
決め方は簡単。
顧問の先生から発表され、それに従うのみ。
まず、団旗2名が発表された。
残念ながら俺の名前はない。
ここに1番の可能性を感じていた俺は、大きな絶望感を抱く。
団長と太鼓かぁ…ちょっと狭き門過ぎる…。
次に、太鼓。
この時に、この15年間の内で1番のミナクル!
見事、俺の名が呼ばれたのだ!
その瞬間に、俺の「モテ期」が足を鳴らして走ってくるのが聞こえた。
そして俺の「モテ期」が耳打ちする。
「バレンタインデーには長蛇の列!」
「下駄箱にはラブレッターのマウンテン!」
「念願の彼女なんてものまで!!」
俺は、この洗礼されまくった耳打ちの数々に、終始ニヤニヤが止まらない…。
そして、俺は学校中の女の子とスキャンダルを飛ばし「女泣かせのガスポン君♡」そんな名前で呼ばれる予感しかしていなかった。
「よーし!今日は生徒名簿でもって
未来の彼女を吟味する会だっ!」
今日から忙しくなりそうな予感を胸に、顧問からの次の発表を待つ。
そして団長。
あの…オンナ野郎…。 チッ…。
ほんとに、いちいち目障りな奴だと思ったかと思うと、さっそくリーダー風を吹かしてやがるし、そして気になるモテ具合はというと、俺達とは比にならない程のモテっぶり……。
「おい!言っとくぞ!
みんなお前が好きなんじゃない!
団長という名前が好きなんだよっ!」
くそぉ…。ちきしょう…。
…許さねぇ… 許さねぇぞ…このアマ…。
俺は嫉妬心に震えた。
第五章 高校 対決
俺はオンナ野郎のモテ具合と、自分のモテ具合を毎日測りながら、残りの中学生活を送った。
━━━仰げば尊し
俺達は色々あったが
無事に中学卒業となった。
勉強の出来なかった俺はバカばかりが通う学校へ、そしてあのオンナ野郎も別ではあったが、あいつもバカばかりが行く学校へと、進学する。こういう学校の恒例で「舐めた奴はシメてく」という、板前みたいな行事があるが、腕にそこそこ自信のあった俺は、入学早々2,3人シメて、悪そうな奴らとはだいたい友達になるという、ドラゴンアッシュ式のヒエラルキーを完成させる。
ただ……まだアイツをシメてない。
これまで何度も殴り合いになりそうにはなったが、まだあのオンナ野郎をシメてなかった。
板前大会のどさくさに紛れ、俺はいよいよ行動する。
まず、オンナ野郎と仲のいい友達を呼び出し
「おめぇら、俺の文句言ってんだろ?」
と、詰め寄る。
そして白状した後、あのオンナ野郎に電話。
「おい、舐めんなよ。ちょっと出てこい」
俺はオンナ野郎を、山に呼び出した。
同じ高校のゴロツキ共を従え、奴を待つ。
奴は約束時間より、随分遅れてやってきた。
「逃げたかと思ったぞ」
俺は奴に嫌味たっぷりで言ってやったが、奴はこちらを見て黙っているだけ、ビビりすぎて声が出ないんでちゅかね〜w
そんは様子を見ていた俺の友達が
「なんだコイツ、ムカつくな。
ちょっと俺にやらせてよ。」と志願。
隊長である俺は、この尖った精鋭の申し出を断る理由などない。
俺はこんな弱っちいオンナ野郎を相手しても仕方ないし、こいつの吠え面さえ見れたら満足だった。
俺は友達の申し出に応じ、オンナ野郎と友達がやり合うの見ていた。
結果はいうまでもなく、俺の友達の圧勝。
オンナ野郎はボロボロ。
俺はオンナ野郎の前に立ち
「おい、詫びろ。」
俺はどうしても、こいつに謝らせたかった。
しかし、なかなか謝ろうとしない。
痺れを切らした俺は奴の胸ぐらを
グイッ!
━━━━━グイッ!
オンナ野郎は俺の胸ぐらを掴み返す。
そして、お前が呼び出しといて、お前はしないのか?なんて舐めた事を言うので俺は奴のお望み通り次は俺の手によってフルボッコにしてやった。
どこまでも舐めた野郎だったが、その明くる日、俺はオンナ野郎の友達にリンチされる。
俺とオンナ野郎との因縁の戦いは、ずっと掴み合いなしで続いていたものを、最後はお互いボロボロになって終わるという結末を迎えた。
よくある話だ。
最終章 それぞれ
あの日以来、俺とオンナ野郎は友達になり、俺のバイトの初任給では奢ってやるという話で、初任給を握り締め、あいつを呼んだら、あのオンナ野郎が全て使い切るなんて、相変わらず色々と舐めた奴だった。
激怒する俺を見て、あいつは笑っていた。
でも、それも今では懐かしい思い出。
社会人としても数年経ち、その生活に慣れてきた俺達は、それぞれの道を歩む。
一緒に遊ぶことも、めっきりとなくなった或る日、近所のショッピングモールで、ビリビリのジーパンでギターを持って、ブラブラしているオンナ野郎を見かけた。
奴もこちらをチラリと見たが、俺の隣に女の子が居るのを見つけて、声は掛けてこなかった。
あのオンナ野郎は今、ニッキだかシナモンだかと言って、まだROCKで騒いでるらしい。
(ガスポン談)
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ニッキ
が
しました