先日の渋谷LIVE。
まず、来てくださった皆さん。アリガト
あと、いつも応援してくれてる皆さん。アリガト

今回は渋谷のLIVE終了後。
翌日の帰り道の話。
東京から愛媛。その道中で俺達は、まだ見ぬ
【エル・ドラード】
それを探し求めた。。そんな話。

第一章  東京

俺達は1年前からの計画「渋谷LIVE」を終え。達成感とも脱力感とも言えるような、長い長い夢から目が覚めた、、、それこそ遠足の帰り道…そんな感覚だった。

翌朝、俺は泊まったホテルの部屋を少し整理して、部屋を出る準備をする。
忘れ物はないよ…な。と、独り言を言いながら辺りを見回し、体を反転させて自室の扉へ向かった。

俺達は15時50分発の飛行機に乗る予定、ホテルのロビーには午前11時集合と少しゆっくりめの待ち合わせだった。少し早く降りてきた俺は、まだ誰も集まってないのを確認して、外の灰皿まで歩く。

煙草にライターの火を近づけながら、俺達の地元では見られないような高いビルを見上げ
「無事に終わったな……」
昨夜のLIVEを思い出していた、嬉しいだけでもなく、寂しい気持ちも大きかった。

俺がLIVEの余韻に揺れている間に、ドボンが降りてきて
「オハヨゴザイマス」「おはよー」
と、2匹の挨拶が交わされる。
程なくして、和田ラヂヲ先生が降りてきた。
俺とドボンは先程より少し丁寧な挨拶をした。

「じゃ行きますか。」
と、ドボン。

そう帰り道は、この2匹と先生1人。
一平くんは山形へ。グレイスは闘病中の父親の元へ行った為であった。

俺達はホテルから出て左折、駅の方へと歩きながら昼食を摂ろうと会話を始める。
品川で食べよういう案も出たが、俺がフライングVを片手に持っていたことから、邪魔になるので羽田まで行ってしまおうという話で収まる。

俺達は切符を買い、電車の列に並ぶ。

サヨナラ。東京。
アリガト。楽シカッタヨ。

第二章     先生

俺達は駅を幾つか通過して、羽田国内線ロビーへとやってきた。
沢山の人型、沢山の言語。そして沢山のドラマを背負った者達が飛行機に乗ろうとしている。
俺達は荷物を預けて、食事をする場所の相談を始めた、

ドボン「寿司にしますか?」

先生「寿司か〜。。何がいい?」

優しい先生は俺がよっぽど未熟に見えたのか、電車に乗る時も、歩いている最中も、何度も俺を気にして振り返ってくれたし、この時も俺が何が食いたいのかを気にかけてくれた。
それなのに俺ときたら
「安いものがいいです。」
なんて、およそ見当違いな返答。
こういう場所の飯は高いだけで美味くないという、俺の偏見からの言葉だった。

ドボンも先生も「うーん。」と唸り。
「じゃ蕎麦にしよーか!」
と、一番無難そうな蕎麦店を選んでくれた。

そして俺達は蕎麦店のある方へ歩き出す。

その時にドボンから
「そういえば、時間あるしラウンジ行きますか?」と、提案が入る。

それにラヂヲ先生は
「ラウンジなんか入れるん?」

「楽天カードがあれば!」とかなんとか
ドボンが言っていたが、俺は詳しくないし、あまり興味もなく、よく話を聞いてなかった。

【そば】と書かれたのれんを潜り、席に着いた俺達は
ラヂヲ先生は鴨が入ってる蕎麦。
ドボンはざるそば(天麩羅付)。
俺はカツとじ膳。
これらを注文した。

先生の蕎麦が到着。
「先にいただきます。」と、先生。

ドボンのざるそばが到着。
「うわ、足りるかなぁ…?」とドボン。

俺のカツとじ膳が到着。
「とじたな〜」と先生のコメントに俺達はクスリと笑い。楽しい昼食を済ませた。

第三章    迷宮

昼食を済ませた俺達は、座って時間を潰せそうな場所を探す。
この時もドボンから
「ラウンジがあったと思うんですよね〜」
と、ラウンジをほのめかす発言。
どうやら少しラウンジが気になるようだ。
俺と先生は
「ラウンジかぁ……」と空返事。

そして、ドボンはラウンジの在り処を聞くためにインフォメーションに行き、イケてない女に、ラウンジの所在を聞いている様子だったが。
しばらくして、ドボンはその女に軽く会釈して、こちらに振り返り歩いてきた
「なんか、ゲートの中みたいですね〜」

どうやら、目的のラウンジは保安ゲートの向こう側らしい。残念。

ここでラヂヲ先生からスタバがあったので、そこで少しくつろぐという案が出た、俺達はスタバに歩いていく途中、通路脇に置かれたソファを見て「ここでもいいね~」等と話しながら、それでもスタバを目指した。

スタバでコーヒーを3つ、あと甘い物も一緒に購入して、近くのテーブルに座った。
……落ち着かない。やたら高い椅子、小さなテーブル、しかもほぼ通路。
俺達は全く落ち着かないまま、くつろごうとするが、やはりくつろげず、早々に席を立ち
次なる安地を模索する。

「もう、ここでええやん」
ラヂヲ先生がスタバに行く途中に見つけたソファを指指した。
一刻も早く腰を下ろしたかった俺は先生の案にすぐさま同意、賛成する。
先生が右、俺がその左側に着席。
ドボンが座ろうとしない…。

「ちょっとラウンジ探してきます!」
またしてもドボン、やたらラウンジを欲している。

俺と先生は「え!まじ!?」と言いながらも、彼の求めるラウンジを探すことを止めないし、この辺りから、少しドボンのラウンジへの執着に興味を持ち始める。

俺と先生は完全にラウンジという名のラビリンスに迷い込んでゆくドボンの背中を見送りながら

俺「…ゲートの中って言ってませんでした?」

先生「うん。ラウンジがこんなに好きとは」

俺「凄い執着ですね」

先生「ラウンジの鬼やな」

そして、俺と先生はラウンジを求めて旅立ったドボンに対し、なんの敬意も持たず、まるで実験で使われるマウスが迷路を行ったり来たりする様を眺めるように、もはや何かの実験をしている。そんな気持ちになっていた。

しばらく待ってもマウスドボンが帰ってこない。俺は先生に煙草を吸ってくると告げ、1匹外に出ようとするが、エスカレーターに乗ったりとか色々で、俺の「迷子センサー」がピーピーと警告音を脳内で鳴らす、俺は煙草を諦め、途中で引き返すことに。そして先程のソファに戻ってきたが、マウスがまだ帰ってきてない……。

俺「どこまで行ったんですかね…あれほどゲートの中だって言ってたのに…」

先生「まさか、電車に乗って国際線の方まで行ってないだろうな」

俺と先生はそこでも、ラウンジという黄金郷を探しに行ってる勇者に敬意を払わず、完全に面白がって、なんなら見つからなくていいのに。くらいの気持ちになっていた。

しばらくしてドボン、こちらに向かって歩いてくるが、まだキョロキョロと突然のラウンジに警戒している様子。

ドボン。大丈夫。
ラウンジはゲートの向こうだ。

第四章     門

俺達はいよいよ保安ゲートを通過する為、その列に並ぶ、この時のドボンの気持ちを考えると、俺も先生も ジッとして居られない。

俺「先生…いよいよゲートの向こうですね!」

先生「うむ、ラウンジだな」

俺達はポケットの中の物をカゴに入れ、見事ゲートを通過IMG_6920
無事にゲートを通過した俺達。
ラウンジ…。もう俺にはその四文字しか頭になかった。

そして搭乗口まで少し歩く。松山便はいつも遠い…。
ドボンを先頭に搭乗口まで歩き始めた。
その時、俺は向かって左手に喫煙所を発見する。
「ちょっと煙草吸っていいですか?」
俺が言うと、先生も吸いたくなってきたということで、俺と先生は煙草を吸ってから搭乗口へ、煙草を吸わないドボンには、先に行っとくように伝えた。

俺と先生はやたらオシャレな喫煙所に入り、煙草の煙の中で、

俺「ドボンやっとラウンジですね!」

先生「ラウンジの鬼やな(2回目)」

煙草を吸い終えた俺と先生はドボンの待つ搭乗口に向かかい、そしてドボンを探す。

第五章    記憶

俺と先生はドボンと再開。
俺は胸の中で
「さぁ、ドボン、ラウンジだ
      思い切りラウンジまで走ればいい
   なんなら、競走するかっ?!」
なんて、まるで原っぱに連れて来た愛馬を放牧する様な心持ち。
愛馬のドボンも鼻を鳴らし喜んでいる。
それなのに意地悪な俺は
「まだだぞ、ちょっと待てよ。」
なんて、優しく言いながら右手のブラシで自慢の愛馬のたくましい後ろ足にブラシをかける。

たまりかねた愛馬ドボンが俺と先生の方を向き

「寿司、行きますか?」

すしーー!!?∑(  Д )─=≡⊙ ⊙ ポ---ンッッッ!

先程まで、あれほどラウンジと言っていたのに、寿司とは!!
どうした、どうしたんだドボン。
俺には何が起こっているのか到底理解できない。保安ゲートを潜る際に、警備の連中に記憶を書き換えられたか!
もしくはドボン自身が「ラ行」の全ての記憶を失ったのか。

お前はあれほどラウンジに向けて頑張ってきたじゃないか!戻れ!
戻ってこい!ドボンっ!!

そんな、俺の思いも虚しく
   ドボンと先生は次なる黄金郷、「寿司屋」を求めて、空港の風景…その中に溶けていった。

第六章    洗脳

俺はドボンと先生の後ろ姿を眺めながら、震えている己の両膝を手で押さえ付ける。

「しっかりしろ、しっかりするんだ俺。
  寿司の後でラウンジ!ラウンジ前に寿司なんて、よくある話じゃないか!しっかりしろ!」

とはいえ、俺は臆病風に吹かれていた。
このままドボンがラウンジを欲さなければ、俺にはもう東京に来た意味さえ疑わしい。

いつしか俺の脳は「ゴロンズが渋谷でLIVE」というより「ドボンが羽田でLOUNGE」。
この方が重要になっていた。

俺は待つ。。
俺はドボンがラウンジを見つけることだけを強く信じて。。。

第七章     富士

俺は誰にも悟られないよう、搭乗口の前に並んだベンチで震えていた。

前方からドボンと先生が戻ってくる…
寿司を食ったにしては早い帰還だ。。

それもそのはず
どうやら、寿司屋は店をたたんでいたらしく、ドボンも先生も寿司には有り付けなかったらしい。

チャンス到来。

ドボンの記憶が警備員共に書き換えられるか、
「ラ行」の記憶を喪失してなければ
今しかない。

ラウンジ チャンス。。

俺はドボンの行動、息づかいに至るまで、固唾を飲んで見守る。
その時である。

「あっ!」

ドボンが何か見つけた!
そして、ラヂヲ先生もそれに
「おぉ。」
と、反応してドボンと同じ方向に歩き始めた。

ラウンジ…   それに違い無い。
俺はドボンの視線を追い掛けて、まだ見ぬラウンジ、、おそらく、こんなんだと想像する。
IMG_6922



そして、俺はドボンの視線の先を、なぞるように自分の視線を送った…











IMG_6923

ん?????What???

俺は、ラヂヲ先生に恥を忍んで訊ねる。
「先生…  一体なんでしょうか…?」

ラヂヲ先生、少し満足気に
「ん?富士山」


フジーーっ!?

?∑(  Д )─=≡⊙ ⊙ ポ---ンッッッ!


おい、ドボン…
探してるのはフジでなく、ラウンジだろ…

俺はガックリと肩を落とし、フラフラのベンチへ戻る…。
ラウンジ…   俺達のラウンジ…。

それから間もなく搭乗が始まり、ドボンも先生も松山へのフライトを楽しんでいたが、俺はあの日以来、ラウンジというラビリンスに今だ迷い続けている。

One more chance  記憶に足を取られて
One more chance  次の場所を選べない
いつでも捜しているよ  どっかに君の姿を
向かいのホーム   路地裏の窓
こんなとこに居るはずもないのに…。